和の心にて候 Top

能楽堂ライブ・「十方彩雲」-Ⅴ

                                                                                                                                                                                       
子孫(うみのこ)に伝えたまわる和ごころを また伝えてと文を託さむ


幕間(まくあい)

館内に熱海芸妓衆がうち揃い、音と共に客一同にご挨拶の迎付(むかいつけ)がすむと、
舞台前列に招待された200名の子どもたちに、絵本がプレゼントされた。
絵本は「ソーじいじのわっしょい」。絵本画家の酒井理恵子さんのデビュー作。
エコバックに入った絵本を芸妓さんたちから手渡された子どもたちの顔がほころぶ。

HP-1017-1.jpg


言霊(あおいりさ)が現われ詩「大いなるもの」を朗読する。
その声は能楽堂に清らに漂うがごとく響く。


HP-1017-2.jpg


                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                            詩は「和の心にて候」の核となるものを詠んだもので、絵本のテーマと同じ、ものごとに和することへのメッセージ。


後座(ござ)
地方の音曲が始まると歌舞の精たちが入ってくる。


HP-1017-3.jpg


熱海芸妓(立方)ほたる、美保、京馬、ちづ穂

 

HP-10218-4.jpg


芸妓たちは、当地のいわれの曲で客をもてなす。
演目 当地の「熱海名所」静岡の「ちゃっきり節」

HP-10218-5.jpg

芸妓の艶やかさに子どもたちは目を見張る。

HP-10218-4-1.jpg

「ちゃっきり節」ではケロヨンの前かけが笑いをさそう。

HP-10218-6.jpg

熱海芸妓(地方) 伊路加、一馬、露子、旬子  (陰囃子)伊豆乃、小いち


これより松千代と紗都美が「山中しぐれ」を舞う。
歌舞音曲の結晶しているすがた・かたちが現われる。


(「能楽堂ライブメモ」より)

                                                                                                                      (2009・11・29 MOA美術館能楽堂  slapshot:星野英介)

能楽堂ライブ・「十方彩雲」-Ⅳ

                                                                                                                                                                                       
天上に月影宿る世のすがた 見よとウズメは華と舞つる


HP-1027-2.jpg


鼓の音に誘われて、アメノウズメと思しき歌舞の精(松千代・熱海芸妓)が姿を現す。


HP-1027.jpg


                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                            姿をつつんで神鈴を振り、彩雲たなびく十方を祝す。


HP-1027-1.jpg


やがて天上からか、妙なる歌声が流れる。
「荒城の月」 歌の精(風間哉子)は滝廉太郎の旋律を歌う。
歌舞の精は、この世に美しき舞楽のあることを艶やかな舞で告げる。


 

HP-1027-3.jpg

共に今に在ることをよろこび、そして、これより光溢れる時がくることを知らせる。

歌舞の精は、しばし舞の美しさをみせ橋掛りより消え去る。


幕間(まくあい)
結のカミ(KNOB)と歌舞の精(初桃・熱海芸妓)はこれから始まる宴に、銅鑼を打ち、出迎える。


HP-1027-4.jpg


銅鑼の音による迎付(むかいつけ)は茶事の所作。
館内に熱海芸妓衆がうち揃い、音と共に客一同にご挨拶。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「荒城の月」

松千代が舞う演目のひとつは3箇月前まで決まっていなかった。
或る日突然、松千代から電話が入り、「荒城の月」を舞いたいとの申し入れがあり、
歌は風間哉子に頼めないか、とのことだった。

振付の花柳あらた師匠からも「荒城の月」を舞わせたいとの要望があった。
訳は、現代の日本人が誰でもが知る名曲であること、
祭事「和の心にて候」の主旨に適うことなどだった。

滝廉太郎作曲の我が国最高傑作といわれる抒情歌。

風間哉子は「謹んで…」といって申し入れを受けた。

歌詞で歌ったのは3番のうちのひとつ。
その歌舞は何人もの人たちの感涙を誘った、と後で聞いた。
名妓の舞に和す清らで透明感のある声。
能舞台に思いがけない歌舞の華が咲いた。

松千代の衣装は白と紅、風間哉子は黒。
意図しなかった奇しき組み合わせ。
三つの日本の色は、得もいわれぬ懐かしさを思い出させてくれた。

(「能楽堂ライブメモ」より)

                                                                                                                      (2009・11・29 MOA美術館能楽堂  slapshot:星野英介)

能楽堂ライブ・「十方彩雲」-Ⅲ

                                                                                                                                                                                       
岩笛の澄みわたりける音に聴くは いきとしいけるものの夢かな


HP-1022.jpg


突如、結びのカミ(KNOB)が貴人口から現われ、舞台中央に座して、地球の記憶が秘められた縄文の岩笛をふく。

岩笛は太古の人々がカミを呼ぶために吹いていたという。
「石笛は心魂を揺るがすような神々しい響きを持っている」、と三島由紀夫は述べている。
能で吹かれる能管は石笛を真似て作られた楽器であるというが、石笛も能管も、他の楽器では及ばない2万2500ヘルツの高周波を出す。

                                                                                                                                                                   


HP-1022-1.jpg

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                              


私はいつもこの岩笛の響きわたる音で覚醒する。
 


KNOBは結びのカミとして「古事記」の中から祝詞(いわいことば)をあげる。


                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                  

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                               

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                      

HP-1022-2.jpg
                                    


祝詞
天地の初発の時 高天原に成りませる神の名は 天御中主神 
次に高御産巣日神 次に神産巣日神 この三柱の神は並独神成り坐し
て 身を隠したまひき

ディジュリドゥはオーストラリアアボリジニの楽器。その歴史は5万年ともいう。
霊妙な音を奏でる結びのカミの力により、この世(館内)に彩雲をたなびかせる。

 

HP-1022-3.jpg

四人のカミは音曲でこの世と和し、暫し留まる。


HP-1022-4.jpg

やがて、「音霊」(望月太喜之丞・鼓)を残し、三人のカミは去ってゆく。
鼓の音はアメノウズメと思しき歌舞の精(松千代)を導く歌の精(風間哉子)を招く。


HP-1022-5.jpg

歌の精は切戸口から出て地謡座に立った。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


結のちから

目に見えないものを見える現象として形づくる力

1.宇宙のビッグバンあり。
2.結の力(波動)が生じる。
3.6種類のクオーク(波動)が中間子(ムスビノチカラ)によって結ばれると素粒子(波動)
  になる。
4.素粒子同志が結ばれて原子(物質)となる。
5.生物には遺伝子(DNA)があり、人間は31億個のDNAをもつ、それは4つの塩基で
  構成される。
6.4つの塩基が無数に組み合わされると様々な生きものができ、高度な組み合わせによりでき
  たものが人間。

産巣日神(ムスビノカミ)

素粒子の陽子、中性子という二つがムスビの力で核になり核と電子が結ばれ原子になり原子同志が結ばれて分子となり、宇宙に無数の星ができた。
素粒子は波動であるが、ムスビの力によりモノとカタチが生じる(すがた・かたち)。
古代、日本人はこの事実を知っていたふしがある。

ムスビの力は焚きあげたご飯を「おむすび」というかたちにするような力。
「かたち」あるものにはこの不思議な力が存在する。
(企画メモより)


(2009・11・29 MOA美術館能楽堂  slapshot:星野英介)


能楽堂ライブ・「十方彩雲」-Ⅱ

                                                                                                                                                                                       
静けさはカミ降臨の験なれ 共に在るかの音の響きに


HP-10125.jpg

                                                            

能楽堂の静けさは轟く音を待っていた。

龍神に稲妻文の法被姿の「雷(いかずち)のカミ」(小林太郎)の登場で館内は一変する。

太鼓の音は雷鳴にも似て、この世のツミ・ケガレを祓い、雷聲は「大いなるもの」に歌を奉じる。

和讃
雷の聲なる音を響かせて 天地の間(はざま)清め参らん

雷のカミのひたすら振る撥は、聴き入る私の鼓動に呼応していた。

和太鼓は太古から日本人の心の音だったと思えた。

祭りに欠かせない最たる楽器は、「風のカミ」(岡山守治・倍音、口琴)と

「音霊」(望月太喜之丞・鼓)を呼ぶ。
                                                                                                                                                                   


HP-10125-1.jpg

                                                                                                                                                                                       岡山守治のホーメイ(倍音)は、日本の声明である。

その脳髄に響く聲は、人々の曲事(まがごと)を払い、鎮める。

風のカミ(岡山) 

和讃
吹き荒れしこの世の風は曲事(まがごと)を 払い鎮める神の験ぞ

「音霊」(望月太喜之丞)は、綾なる鼓を奏で、

音(波動)がいきとし生けるものの根源であることを静かに知らしめる。

音霊(望月) 

和讃
この音は宇宙(そら)なる母の生まし音 神と仏の声と聴かまし


                                                                                                                                                              

HP-10125-2.jpg


風のカミと言霊は、結びのカミ(KNOB)の出現を促す。

やがて結びのカミが貴人口から突如として登場する。
(続く)


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


能楽堂ライブは3部構成(初座、幕間、後座)としている。

茶の湯にいう「茶事」の構成に倣っている。

初座

1.大いなるものを招くの儀

2.雷のカミが現れ、太鼓を打つ

  風のカミは人びとの曲事(まがごと)を払い、鎮める

  音霊は人びとを生あることの喜びでつつむ

3.風のカミと音霊が現れる

4.結びのカミが現れ、祝詞をあげる

  結びの力により、この世(館内)に彩雲をたなびかせる

(構成メモより)


(2009・11・29 MOA美術館能楽堂  slapshot:星野英介)

能楽堂ライブ・「十方彩雲」-Ⅰ

                                                                                                                                                                                                                                                     

雲上にさやけく薫る相聞の 歌舞のかたちを待つは清しさ


HP-1020.jpg
                                                            

目に見えるもの、見えないものがこの舞台で交会する。

見えるものは私たち。見えぬものは「大いなるもの」。

ここに集い、共に楽しみ、よろこび励ます。

私は、今は亡き縁者たちを招いた。                                                                                                                                                                   


HP-1020-1.jpg


巫女(風間哉子)の先導で、斎主(KNOB)が「大いなるもの」の依り代(よりしろ)を建てる。

館内は水を打ったような静けさ。

高揚してゆく緊張感が「祭事」の始まりを知らせる。


                                                                                                                                                              

HP-1020-2.jpg

依り代は「若松」。大いなるものは「紙垂(しで)」。


小さな蝶の羽ばたきが

地球の裏にとどく時

大きな風になるという

大いなるものを招きて

共に聴く音曲が

風となり彩雲となって

結びの輪を広げてゆく  

(演出メモより)

                                                                                                                                                                                                                                                                                                        
これより雷(イカズチ)のカミ(小林太郎)が現れ、太鼓を轟かす。                                                         


(続く)


(2009・11・29 MOA美術館能楽堂  slapshot:星野英介)