歌舞音曲
「兵ちゃん、こんばんは、暑くなってきたわね」
「夏らしくなったね」
「暑気払いに唄いましょうか」
「歌はやっぱり別れの歌に極まるね」
別れたあとの切ないなかで 出会いの歌を唄ってる(72)
「それって立ち直りが早過ぎないか」
「いつまでもメソメソしてられないでしょ。物価も上がってるし」
「それにしても前向きだなぁ」
「どう、兵ちゃんも」
ディスコではしゃいで踊ってみたが 骨が硬そなタコ踊り(73)
「誰のこと? 兵ちゃんでしょう」
「モテてるって思ってた頃だ。鏡に映った男が妙にぎこちない」
「ホッ、ホホホホ、タコ踊りねぇ」
「今のヒップホップだなぁ、歳には勝てないな」
「昔、聞いたことがあるの」
ダラリの帯がディスコで舞えば 都おどりも色褪せる(74)
「情景が目に浮かぶなぁ。強烈な印象だと思うよ」
「日本の芸能には秘めたパワーがあるのよ」
「お祭りと歌舞音曲で暮らす大和の国だからよ」
「中でも都々逸は奥が深くて最高ね」
「いってみようか」
粋の花だよ七七七五 心のヒダを見せる灯よ(75)
「そうね、みんな言うに言えないことがあるよね」
「自分はみんな正しくて、お前が変われ、って」
「お互いさまなのにね」
「言いたいことをいってろ、ってところだな」
歌を唄って踊って舞って ほんに日本の粋なとこ(76)
「だけど、カラオケは味気がないわね」
「いいんじゃないの、今じゃ世界の文化だよ」
「味気のないのが玉にキズ」
「慣れてしまえば、違和感のないのが日本人の優れたとこかも」
何のことなし明日もくると 思って唄ってあの世往き(77)
「常ならずか…諸行無常だなぁ」
「みんな昨日と変わっているのに気がつかないのよ」
「タマも変わってるかなぁ」
「変わらニャンいん!」