ほたる
「兵ちゃんこんばんは。タマ生きてたの」
「姐さんもニャーン」
「あら、タマ今夜も冴えてるわね」
「姐さん久しぶりだね」
「兵ちゃんまた熱海へ行ってたでしょ」
「知ってたの」
「アタシは地獄耳なのよ」
「地獄往きニャーン」
「コノヤロー」
「姐さん荒れないでいってみようか」
「寂しかったの、お願い」
一と二の字と三の字書いて 逢えぬ夜の数かぞえ唄(321)
「まあ、アタシのことを……ありがとう。お礼にね」
アタシ旬なのあなたはサカリ 息が溶け合う夏の夜(322)
「姐さんそれって熱海芸者に唄ってやったのを夏にしたんだね」
「そうよ、少し妬けるから唄ってみたの」
「未だに女心があるんだなぁ」
「アタシは未だツボミっていってるでしょ」
「それじゃ替え言葉都々逸で…ん」
アタシ旬なのあなたはサカリ 息が溶け合う秋の夜半(323)
「秋は夜半の月ね、綺麗でいいわね」
「タマ燃えるニャーン」
「お前はサカリで燃えてるだけでしょ」
「じゃ、冬までいってみようか」
アタシ旬なのあなたはサカリ 息が溶け合う冬の晩(324)
「冬は晩ね。何か温かいわね。おコタみたいね」
「コタツで都々逸って雰囲気だよ」
「ところで韓国の前の大統領が亡くなったわね」
「みんな苦しみは同じなんだね」
「お弔いでこんなのどうかしら、…ん」
一つ消えたらまた二つ消え ホタルと同じ世のさだめ(325)
「ホタルも同じ定めだね。日本人は山川草木悉皆成仏だなぁ」
「日本人はこの世に在るものは皆同じっていうのが優しいわね」
「タマも優しいニャーン」
「お前が優しいのはオスにだけだろ」
「よく見てるニャーン」
「姐さんやっぱり今夜は荒れ気味だね」
「今夜は呑みたい気分なの、ん、……こんなのは」
恋の鞘当てホタルとセミの 鳴かぬと鳴くの根くらべ(326)
「姐さんの心情はよく分かりました、ハイ」
「嘘ばっかり、兵ちゃんは口が太閤秀吉だから」
「口で勝負は姐さんニャーン」
「バカタマ、それって総入歯になってからなのよ」
「????。意味わかんニャイーン」
「お前如きにアタシの芸術が解ってたまるか!」
「磯千代姐さん、今夜はホタルで締めてみようか」
恋の模様の光を放つ 粋なホタルは身を焦がす(327)
「兵ちゃんやっぱりいいわね。二度惚れしそうだわ」
「姐さんも気が多いね」
「タマほどじゃないでしょ」
「歳のこともあるんじゃないの」
「まあ、憎いお方」
「今夜は新月で闇夜だよ。送ろうか」
「うれしい、兵ちゃんお願いね」