手本にしろよ
「姐さん、今夜の着物は素敵だねぇ」
「壁上布というのよ」
「いいねぇ、涼しそうだね」
「着物は夏物でも暑いのよ。だけど芸者のコスチュウームでしょ」
「今夜はコスプレでいけそうだね」
「いきましょうか」
三味の爪弾きあなたの声と 溶けてひとつになる今宵(38)
「声が艶っぽいねぇ。姐さん、伊達に齢を重ねていないね」
「私ゃヨワイ女です」
「嘘言っちゃって」
「兵ちゃん噂ではいい人が何人もいるらしいけど?」
どうしているのよ私の他に 女だけなら許すけど(39)
「おいおい、それはないよ」
「冗談よ、兵ちゃんもやって」
DNAを覗いてみたら 君も身内だあいつまで(40)
「鎌倉時代くらいまで遡れば日本の人はみんな身内だって。だけど身内でも争いが絶えないものね」
「この頃、人を殺める事件が多いね。生まれてきたことが素敵な苦しみだというのにね」
「こんなのどう?」
母と子となるさだめは重い 六七億の一だもの(41)
「母と子のきずなは強いね。世の若いお母さんに期待したいね」
「お母さんがお手本なのよ」
「お父さんは?」
「兵ちゃん、あなた胸に手を当ててみれば」
「おう、ミステイク! よし!」
先に生きてる大人じゃないか 手本にしろよとなぜ言えぬ(42)
「兵ちゃんにしてはいい唄ね。反面教師かしら」
「大人がこれがいいと思ったら、子どもたちにこれが手本だというべきだな」
「今は言い切ると責任がでるからいやなんだって」
「だから、何でもかんでも語尾に『?』がつくのか」
「どげんかせんといかんって流行語があるわね」
「選択はいずれ子どもたちがするさ」
自ら命を断つのは野暮ね 生きてくために生まれたに(43)
「大人はもっと自信を持って、子等に伝えるべきだな」
「ゴミの量と一緒で、今は人様のせいにする人が増えたわね」
「これから二人でコスプレショウで気を紛らすかな」