艶を増す
「兵ちゃん、お彼岸の中日ね」
「早いもんだなぁ。あの夏の暑さが嘘のようだ…」
「過ぎた日の早いこと、来る日のもどかしさね」
「世の中毒入り食品で騒がしいね。お隣の国民性が判っていたはずなのに。政治に背骨がなくなっているのが寂しいね」
「寂しさね…。秋たけなわね。どうこんなの」
みんな孤独という寂しさに 肌の温もり着せたがる(164)
「肌の温もりねぇ。これに勝るものはないな」
「こんなにメールで繋がっている時代ても、人のナマの響き合いがないのね」
「肌と肌とで擦り合っていないからなぁ」
「男女の仲も擦り方が少ないのよ」
「簡単がいい、っていう時代だからね。よし一発!」
何もかにもが薄くて軽い ひとの思いと頭まで(165)
「偽装やウソがばれて、頭を下げるのが多くなってファッション的になっているわね。頭の下げ方を大人のマナーとして、世のリーダーたちに学ばせなけりゃならないわ。寂しいことね…」
「大人が色っぽくないんだな。直ぐに腐ってゆくサバみたいなもんだな。…さしずめボクは野暮な秋サバか? 酢でしめられたいもんだね」
「嘘おっしゃい! 兵ちゃんは確信犯でしょ」
「磯千代姐さんとは違うね」
「タマが目でフーンていってるわ。どう? こんなの」
これという人抱いてるくせに 野暮でモテぬと煙に巻く(166)
「姐さん自分のことだな。それは擬似転換だよ」
「フフフ、兵ちゃんのバカ!」
「それにしても若い人から色気のある粋な話を聞かなくなったな」
「無理よ、ボキャブラリーがないのよ、英語が多くなってるからね」
「へー、姐さんがボキャとはね」
「失礼ね、アタシだって現代に生きてるのよ。だからこの世で一緒に生きてる二十歳くらいの男の子と恋に堕ちても不思議じゃないわ。大切なのはときめきよ!」
好かれることを願っちゃだめよ好いているからときめくの(167)
「姐さん脱帽です。ボクも励みます」
「兵ちゃんは励まなくてもいいんでしょ。分かるわよ」
「虫が鳴いてるなぁ。…ん」
秋の虫さえ鳴く鳴く生きる 泣き泣き生きてみるといい(168)
「せめて偽装はしないでね。泣く泣く瘦せ我慢をしてね」
「毒入り食品を作って売った会社の経営者は三年ほどそれを食べてみることを義務づけるといいね。どうせケガレた身だからね」
「病人や子どもに食べさせるとは許せないわね」
「好きあった同士ならこんなかな?」
ほんの少しでいいから分けて 別れ涙の口移し(169)
「毒売り官僚や、会社もこのぐらいの色気が欲しいわね」
「これから涼しい寒さに向かうね」
「嬉しいわ、袷(あわせ)の着物が着れて。女がまた艶を増すのよ」
「ボクも嬉しいね。タマも艶を増すかな?」
「増してるわよ。今夜はタマに、いつか唄った都々逸をひねってひとつ、…ん」
逢えぬお人と二人になれば 何かありそな夜半の月(170)
「タマんニャいーん!」
「タマ、そんなに悶えてどうするの!」
「姐さん送ろうか」
「お願いね…」