今度とお化け
「兵ちゃん今晩は、タマも今晩は」
「姐さん今夜は呂に塩瀬の帯か、洒落てるねぇ」
「虫の鳴く頃になるとね…」
「お酒もこれから温めるようになるわね」
「タマも温めてって」
「兵ちゃんいって」
「…ん」
偽装列島どこまで行くの 粋な大人がいなくなる(156)
「オリンピックが終わるとお化けみたいにゾロ出てくるわね」
「毒入り米か。弱いものを食い物にしているなんて最悪だなぁ」
「役人からはじまって、関係者はこのようなことは2度とないようにって、今度こそは、って頭を下げるけど、今度今度ってお化けみたいに出てくるわね」
「子どもの教育に一番悪いのはこれだね。尊敬される大人がいないことだね」
「もひとつ、…ん」
今度とお化けは出たことがない 出るは偽装のサゲ頭(157)
「日本人の弱点ね。総じてナアナアね」
「強いていえばみんなやりそうなことだってことかな」
「アタシはやらないわよ」
「姐さん歳と皺を偽装してるんじゃないの?」
「あら失礼ね! これは偽装じゃなくて変装よ」
「フフフ、罪がない偽装ね」
「大体、人を思いやる日本人がやることではないわよ」
「姐さん一発!」
大和ごころに恥じないまでも 粋な心を忘れずに(158)
「やっぱりい粋が出てくるね」
「お相撲の世界は驚くほど解放的ね。日本の人は外国人でも何でも受け入れるけど、ケガレに対しては許さない人たちね。偽装の向うにはケガレが待っていて、一族郎党立ち上がれなくなるのよ。麻薬でケガレたお相撲はお相撲ではなくなるのよ」
「ガイジンが判らないところだな。品格と品性を重んじる民族を…」
「何でもそうね。歳を重ねて経験の上にあぐらをかいてると、ケガレることをわすれるのよ」
「姐さんもそれでか!」
アタシゃケガレのない身でござる あるは色香と微笑みと(159)
「いい玉だね」
「タマ、兵ちゃんがいいタマっていってるわよ」
「当たり前ニャン」
どっかで岐れる行き着く先が どっかで聴こえる母の声(160)
「岐路に立つとお母さんの声がする…」
「この頃のヤングママはケガレの意味が解らないから、ネットで相談してから行く末を決めるそうよ。あんなガラスの画面に相談してどうするのよ」
「家族や友人のことか…。ボクは人のこといえないなぁ」
この世で一番大事なものは わたしを見ていてくれるひと(161)
「そうかも知れないね。それで生きられるものね」
「兵ちゃん、その歳で今頃分かったの?」
「面目ない! 古典にこんなのがあった、…ん」
可哀そうだよズボンのオナラ 右と左に泣き別れ(162)
「ボクには岐路があったのかなぁ」
「兵ちゃんはなかったかもね。毎日が岐路のような気がするわ。危なくて見ていられないもの」
「よし!」
キロキロと メタボのひとが泣いては笑う 針が教える命かな(163)
「俳句チックね。針の体重計ってなつかしいわね」
「タマ、鈴虫が籠の上に出てるわよ!」
「これ松虫ニャン」
「チンチロリーン、リーン、チンチロリーン」
「???」
「十五夜さんね」