おあいこ
「兵ちゃん、こんばんは」
「こんばんは、姐さんこの暑さでよく参らないねぇ」
「これからが本番よ」
「暦じゃもう立秋だね」
「アタシはこの時期、終戦を思うわ。真夏のあの暑い日を…」
前の戦争で二親死んだ だから私は生かされた(110)
「そうか、親御さんが亡くなったの。ちょっと切ないね」
「人間ホントに明日のことは分からないわ」
「だけど、生き残ってなお、それで生かされたとはいいね」
「授かった命だもの粗末にできないわ」
「それにしても日本人は偉いというか、瘦せ我慢ができるというか…」
「そうね、原爆のことも含めてお互い様、という精神ね」
「歴史認識って、いちゃもんつけないね」
「喧嘩は両成敗の民族ね。終わればおあいこね」
「恨みは忘れなくても残さない。精神が気高いね」
「古いのにこんなのあるわ、…ん」
思いだすよじゃ愚かでござる 思い出さずに忘れずに(111)
「いいねぇ。そうして次にその思いを伝えるんだな」
「核をもってる国が捨てないのに、他は持つなっていうのもエゴだわね」
「金持ちが他の奴はお金を持つな、っていってるようなレベルだな」
「大国意識はそのまま個人のエゴ意識になってる。それが苦しみの基なのにね」
「自分だけは違うんだってか」
「日本の和の精神を学ぶべきね」
「そうだ。こんなのはどう?」
自分の顔を見た人いない だから鏡となれるはず(112)
「被爆国日本には日本の役割があるのよ」
「磯千代姐さんには妙な説得力があるね」
「はい、何にも文句言わずに生きてきたからね」
「確かお孫さんが…」
「3人いるわよ」
「何て呼ばれてるの」
「笑わないで下さいね、…ん」
バアバとババアじゃ立場が違う お国言葉の奥深さ(113)
「うーん、そうだなぁ」
「この頃孫が呼び方を変えるのよ。ちょっと複雑な心境になるわ」
「繊細な民族だなあ。その内ボクもジージがジジーか。ハハハハ」
「ハハじゃないわよ」
「平和の日本の象徴だね」
「タマ、その格好は平和の像なの?」
「いいニャンか」
讃えて欲しい祖父母のことを 今在ること身をあげて(114)
「もうすぐお盆ね。今年は孫と迎え火を焚くわ」
「真夏の夕暮れ時はご先祖さんを想うね」
「黄昏時のあやしさね。この世とあの世がひとつになる時間ね」
「こんなのどう」
独りぼっちとあなたは言うが よく見りゃ周りの優しい目(115)
「人を思いやる気持ちがある分だけ、自分を思いやってくれる人がいるそうよ」
「独りぼっちじゃないんだなぁ」
「もうすぐ満月ね」
「タマがまた疼く夜がくるね」