和の心にて候 Top

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夕立

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「兵ちゃん今晩は。タマも変わりないね」
「ゴロニャーン」
「姐さん、今日はズラ着きだね。さすが名妓だね」
「兵ちゃん、今日は冷たいビールね」
「この暑さは応えるね。昼間歩くと、まるで炎が脊中から追いかけてくるようだよ」
「夏は炎のように燃えるものよ。時折夕立もありますけど」
「こんなのどう?」


ioriten.gif夕立がザット降るほど浮き名は立てど 只の一度も濡れはせず(97)
「古典都々逸ね。粋な文句だわねぇ」
「浮き名って噂のことだけど、今のフォーカスみたいなエゲツなさはなかったな」
「そうね、マスコミが世の中を牛耳っているようね」
「情報が早ければお金になるからね」
「でも、すぐに忘れるわ。秋葉原の事件なんて、もう誰も話題に出さないわ」
「忘れることもひとつの才能かも知れないね」
「哀しいけれど、人間はずっと同じ過ちを繰り返すのね」


ioriten.gif二度と起こさぬ浮気の虫は「ホント?」ん、言った先から目を覚ます(98)
「兵ちゃんのことじゃないの」
「タマが呻いてるよ」
「いつの世も女が実権を握ってるわ。女を見れば男が分かる」
「逆じゃないのか?」
「この頃、若い夫婦がもめる種は…ん、」


ioriten.gif私だけ見つめていると言ってたくせに 見つめてるさき義母の顔(99)
「男児は押しなべてマザコンだからな」
「それにしても永遠のもめるテーマね」
「嫁さんだっていずれそうなるのにね」
「哀しいけれど、同じ過ちを繰り返す…」


ioriten.gif私の操をよろめかせたに 何で手足が出せないの(100)
「ミサオって言葉、今あるの? 磯千代姐さん、ボクのことじゃないよね」
「かもよ」
「ボクはもう、全身硬直状態だよ」
「ウソおっしゃい!」


ioriten.gif嘘をつくなと怒鳴っちゃだめよ カツラ着けてるあなたでしょ(101)
「一本取られたわね。兵ちゃん素敵!」
「人はみんな自分の都合で生きてるのに、それが分からないんだなあ」
「それで笑うことも泣くこともあるのよ」
「タマがまた着替えにいったみたいだよ」
「もう、お座敷を出て行く仕草で分かるのね」
「確か、井伊大老が唄った都々逸があったな」
「こういうのね」


ioriten.gif逢うて別れて別れて逢うて「泣くも笑うもあとやさき」 末は野の風 秋の風
     一期一会の 別れかな(102)
「茶湯一会集の中にあるやつだね。都々逸は奥行きがあるねぇ」
「兵ちゃん、またお座敷かけて下さいな」
「うん、秋の風が吹く前にね」
「ネエ、タマが一緒に歩けっていってるわよ」
「夏休みだ、一緒に行こうニャン」
「おお…ノー、猫にも衣装!」
「もうすぐ新月ね」


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