新之介文庫だより

2019年3月19日
『建築相聞歌』感想文と新スタッフのご紹介

新之介文庫の日野です。
うららかな日差しに一歩ずつ春を感じる今日このごろです。
新之介文庫では、句集『千々繚乱』と共に、句歌都々逸集 『緑の洞』第一弾の出版に向けて着々と準備を進めております。
さて、今回は三島市の深澤和子さんより『建築相聞歌』の感想文をいただきましたのでご紹介いたします。
深澤さんには、主にギャラリー珎玄齋の分野でこれから新しく仲間に加わっていただくことになりました。
みなさまどうぞよろしくお願いいたします。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

「建築相聞歌」を読んで

深澤和子

 「建築相聞歌」・・・タイトルを見たときには、建築家が好きな建築物への称賛を詠んだ歌が並んでいるのかとも思ったが、すぐにそれは見当違いなのがわかった。
「問いかけ独白する建築家の美意識」・・・独白?
ページを捲ってみると題名が付けられた1行から数行の文章が並んでいる。
独白といっても感情的な言葉ではなく、一歩引いて客観的に考察するような文章だと思った。
様々な観点からの言葉の中に、建築士としての仕事や経営者としての立場で、苦悩や葛藤を抱えつつも真摯に向き合い多忙な日々を生きている著者の姿は想像できるとしても、建築も設計も経営も全くの無知である私には著者の置かれている状況や心情を理解したり共感したりすることは難しい。
そんなふうに思い始めた辺りで、最初の写真が登場した。著者の書である。造形的な文字で島崎藤村の「初恋」の第一連が書かれている。
「まだ上げ初めし前髪の林檎のもとにみえし時…」
中学の授業で何でもよいから詩を暗唱するよう言われ、この詩を選んだことを思い出した。

そこから、写真のページだけ先に見ていった。
書・篆刻・陶芸・友禅・茶杓・ステンドグラス・手書帯・画の20作品が掲載されている。すべて著者の作品である。なんと多才な人なのだろう!
創作物に疎い私でも、単に趣味の域でないことは感じられる。さらに、独白を読んでいくと、前述のような創作だけでなく、茶事を行い、座禅を組み、和歌を詠み、文学や歴史にも精通していることがわかる。
建築というと創作の最たるものであろうから、これらは建築を生業とするために必要な素養だというのだろうか。だが建築士が皆そうだというわけではないだろう。
自分の仕事により高い目標を掲げ、理想を追求し、実現しようとする精神を持っていてこそ、多忙な中でもそれを可能にするのだろう。
しかも著者は決してストイックというわけではなく、楽しみとして創作物に取り組み、ときには酒を楽しみ、ときには心をコムラサキに染めたりもするという人間の幅の広さを感じさせる。
芸術や文化や教養の部分においても貧弱な知識しか持たず、これまで何かを極めようとしたこともなく中途半端に生きてきた私とは、圧倒的にレベルが違う。理解や共感などと考えるのは最初からおこがましいのだ。
そう気づくと、不思議と文章のリズムが心地よく感じられ、どこかに薫り高い和の文化を感じながら一気に読み終えた。

そして一本の樹のイメージが浮かんできた。
まっすぐな幹からいろいろな方向に枝を伸ばし、それぞれの枝は瑞々しい葉を茂らせ、様々な色の花や実をつけている。それでいて全体にバランスよく、とても美しい形を作っている。どこからか昆虫や鳥たちもやってきてはその花や実を啄んだりする。
観る角度によって様々な表情になるその樹は、これから先も絶えず新しい枝葉が育ち、花を咲かせる。
この美しい樹が私のイメージした「建築家」というものかもしれない。
果たして一番高い枝はどこまで伸び、その幹はどのくらい太くなっていくのだろうか。

2019年3月19日

2019年3月2日
新刊『千々繚乱』のお知らせ

新刊本のお知らせ

句集『千々繚乱』(ちぢりょうらん)
自撰 700句

判型:四六判
製本:上製本
総頁:176頁予定
定価:未定
発売日:2019年7月予定
著者:太田新之介
発行:新之介文庫

 

あとがき
今年の六月で私の設計生活も半世紀となる。過ぎてみれば長短相半ばのようだ。
五十年の間に意に任せて句、歌、都々逸、歌詞、詩などを詠んできた。
中でも俳句は日々を占めていた設計作業への詠嘆が多くあり、設計を題としたものが大半を占めている。直情的で気が短く、禅語が好きな性に、極短語である俳句様式が合っていたのだと思う。

設計は裡なる自分との対話が主となる作業で、己の成長なくしては高見に登れないものだ。また何よりもその過程において技術的訓練や習得だけでなく、設計者としての良心を育てて行く覚悟が必要となる。
設計に対する良心こそ、人間の生活環境と文化をかたちづくる基本的要件と思ってきたものだ。その意味で三千余の俳句はその良き伴侶となって私を支えてくれていた。

句は十七文字形式を基本としているものの、正統のものとは言い難く、川柳や狂歌のような句とも思えるし、和歌の尻切れのようでもある。いってしまえば口から出て来る言葉を搦め捕っただけの感があり、もとより俳聖や俳人からは酷評されること必定と思う。また余り推敲も成していないため、我流の域を出ないものと承知している。
編集に際し句をまとめてみると、苦渋の勝る歳月だったと述懐する。しかしこの幾多の苦行は、現在の私を形成している全てであり、苦難こそが自分を鍛え、育ててくれた恩人ともいえるものだ。

句作の師は『於八於五』を共著した俳人赤松孝子である。
叔母の孝子は御年九十三歳で、娘の住む仙台で暮らしている。私はこの句集を叔母に届けるのを楽しみにしているが、「お前も成長していないねぇ」と、いわれるような気がしている。
(中略)

当年とって七十三、この先は定かではないが、息絶えるまで設計に身を染めていたいと思っている。
(後略)

 

 

2019年3月2日

2019年2月10日
近詠・句歌都々逸36

 

「高熱で、、、」女とお金にゃ めっぽう強く 熱で認知か ホホフヘホ?

 

熱にうなされ 知らない人の 名を呼び覚めたら「またね、、」
      ウナサレルディトウキョウアーアーアー

 

熱が出てきた 意識が薄れ「何よ!?」、ン、、 あらぬ名を呼び 引寄せる

 

オレは高熱 変態ジジイ 熱の所為かと 手が伸びる

 

若い看護師 白衣の天使 「優しいネ、、、」座薬で忽ち 下がる熱

 

「座薬ネ、、、」お尻出すから 優しく挿れて 頼む途端に「アッ!」早すぎる

 

出すの我慢と お股に力 気持ちいいのよ ダダジジド?

 

「お熱下がったネ」とても優しい 言葉だけれど オジイチャンは やめてくれ〜

 

逆さ富士見て 想いは募り 熱にうなされ「座薬よ、だって!」 似た顔でw

 

妄想も 知足も共に 寝正月

 

元旦や 神仏拝し 雑煮食う

 

正月や 常の如くの 祝い膳

 

一族が 皆福の神 打ち揃う

 

正月を 迎え迎えて 七十四

 

酒旨し 花のお節や 有難し

 

富士の嶺 新規一転 手を合わす

 

正月や 風呂に入りて 妄想す

 

正月の 餃子美味なり 雪ならず

 

三が日 麦酒和牛と 餅太り

 

平成や 最後の元日 富士拝す

 

 

2019年2月10日

2019年1月26日
近詠・句歌都々逸35

 

物持たぬ 足どり軽し 富士の雪

 

枯葉踏みしめ 幼心 手を繋ぎ

 

涙して 夜のしじまに 夢を追う

 

君の胸 あったかい明日も 生きられる

 

〽 アナタ認知か 果てまたボケか 認知してない 子が二人

 

〽 お前タコだな アンタはイカよ 何時も吸いつく 仲だもの

 

〽 二人認知を してるじゃないか ボケた振りして なにょしてる

 

〽 認知してねと 彼女に言われ 認知症だと 鼻ほじる

 

〽 若い振りして 頬紅塗って 入歯落とすな 初詣

 

〽 年寄り夫婦が 手を取り歩く ガニ股歩行も 乙なもの

 

〽 老いて朽ちるは この世の定め せめて逢いたや 彼のひとに

 

〽 プーチン近平 トランプさんの 哀れな末路が 眼に浮か

 

〽 「コツコツと・・」道を歩んだ 人だけ見える 近づく光 黄泉の国

 

〽 冬のひとり寝 寒々しいが 夢の逢瀬で 火と燃える

 

〽 「人の世は」裏と表の見せ方加減  たまに見せよか 斜め横顔

 

〽 裏と表と 斜めで攻める 気持ち吉野の 山桜

 

〽 お金も着物も 車もいらぬ 主のハートが ただ欲しい

 

〽 ジングルベルを 歌って直ぐに 除夜の鐘撞き 初詣「ほんに日本は謎の国」

 

人生は 不思議なりけり また明日も不思議不思議と 言うて生きるか

 

建築の 謎解き参る 五十年 面白きかな 天地の間は

 

 

 

 

2019年1月26日

2018年12月30日
近詠・句歌都々逸34

 

大笑す 神と仏の 泡おどり

 

見つめ合う ハマの夜霧よ 有難う

 

ビッグバン 我も塵なる 輪廻かな

 

宙を行く 星の欠片か 今日の夢

 

〽 ダイヤ買えたしお金もできた そろそろ貴方と別れよか

 

〽 日産ゴーンは金満亡者 出稼ぎオヤジの成れの果て

 

〽 お金まみれの貴方が好きよ カードくれればもっと好き

 

〽 金の亡者の行き先きゃ地獄 札の重さで溺れ死に

 

〽 お前白ブタアンタはパンダ 十年経ったらこの台詞

 

〽 お前ババアだアンタはジジイ 「クソ」がついたらあの世往き

 

〽 人生不可思議謎めく日々は 謎が謎呼び夢も呼ぶ

 

〽 「昔ゃネ」立てば芍薬座れば牡丹 歩く姿は百合の花

 

〽 「今じゃネ」立てばビア樽座ればダルマ 歩く姿はトドに似る

 

〽 野暮なアナタに愛想を尽かし 粋なお方と北空港

 

〽 君は宝だ貴方はすべて 新婚当時の合言葉

 

〽 お前ブスだなアンタはケチよ 三年経ったら捨て台詞

 

気持ちよし 今日この頃の 冬の月

 

手を握る 女の匂い 掘り炬燵

 

我が質(たち)は 偏屈変態 粋な野暮

 

有難や ただ有難や 除夜の鐘

 

 

写真:干支は戌から亥へ 木目込み人形制作は友人浅井真美さんのお母さん
「毎年有難うございます」

 

 

2018年12月30日

2018年12月9日
近詠・句歌都々逸33

 

何処までも 続くススキ野 ひつじ雲

 

人は生き 往くものと知る 枯紅葉

 

雄々しくも 孤立無援の 冬仕度

 

独り行く 頼らぬ自由 冬立ちぬ

 

眼前に 冬の星座や 筆走る

 

冬コーヒー 飲んでは語る 建築史

 

寒空に 連夜のビール 風まかせ

 

勝負なし 人生色なし 冬の空

 

池の寒月 ショートカットを 回想す

 

散歩する 小径に野菊 宵の月

 

大輪の 白い椿に 托す夢

 

彼の女を 想い手折るか 白椿

 

善悪や 富士に誘う 雪景色

 

待つ身にも 燃える種あり 宵時雨

 

鳳仙花 幼心の 辿り路

 

忍び逢う 恋の色かな 黒椿

 

紅葉落つ 夢を宿して 雪を待つ

 

麗人や 俳句遺して 旅仕度

 

三日月を お供に散歩 根競べ

 

強羅なる 名蹟朽ちるか 苔紅葉

 

 

 

2018年12月9日

2018年11月25日
近詠・句歌都々逸32

 

何時か見た 恋の色かな 西王母

 

フグ刺しに 父やともがら 波の音

 

設計の 嬉しさに逢い 照葉挿す

 

落葉や 一縷の望み 待つは春

 

星冴えて 我が想いかと 眺望す

 

麗人の 面影見せて 散る紅葉

 

忙しや 心亡ぼす 古稀の坂

 

コキ過ぎて 耳も昭和も 遠くなり

 

駆け寄れば 彼待つ橋に 紅い月

 

することは 際限もなき 富士の雪

 

明日をのみ 思いわずらう 白椿

 

白椿 いつか来た道 回り道

 

人は皆 苦しみ生きる 落葉かな

 

たちまちに 生老病死 杜鵑草

 

月見草に 話しかけては 散歩道

 

黒髪や 白きが肌に 翳る月

 

設計や 苦し紛れに 月を描く

 

山を見て 海を描くかの 恋や罪

 

便り来て 返さぬ弱さ 笑う猫

 

遠ければ なお燃えにけり 月の路

 

 

2018年11月25日

2018年11月10日
近詠・句歌都々逸31

 

鉛筆を 削り昨日に 悶絶す

 

野の仏 改心約す 初時雨

 

滔々と 道行く先に 宵の星

 

「道路案内を見て」
港北は 我若き折住みし丘 鳥の声聴き 偲ぶ往時を

 

「川和高校建設」
川和なる 学びの舎造りしは 我19なる 若きその頃

 

来てみれば 浜の歴博面白き 子等の歓声 あちこちに飛ぶ

 

海隔て 磯に波寄る故郷は 思い出霞み 今や不帰の地

 

故郷の 空懐かしや カモメ舞う

 

セーターを 出して去年への 辿り旅

 

熟し柿 次の逢瀬を 急き立てる

 

忙しや あら忙しや 枯尾花

 

妄想す 設計昇華 時間軸

 

何時までか 止まぬ設計 富士に雪

 

黒椿 想いの君に 会いにけり

 

浄々の 気を研ぎ澄まし 線を引く

 

夜空駆け 構想君に 伝えたし

 

赤い橋 紅葉は招く 彼の岸へ

 

紅葉狩 グラデーションの 君を観る

 

掌をとりて 妖しや闇に 夢の中

 

茶を点てて 熱き静寂に くちづける

 

 

2018年11月10日

2018年10月27日
近詠・句歌都々逸30

 

葉や落ちる 絶える時まで 合掌す

 

母想う 雲間の月に 残る声

 

紅月や 清池を照らし 忘却す

 

紫の花 一輪に 恋時雨

 

祈りあり 生ある日まで 落葉掃き

 

〽 主は素敵よこの世の宝 言ってる先から金勘定

 

〽 君の気持は知ってはいたが 知らぬ素振りの愛もある

 

〽 コイ(恋)というからアイ(愛)って応え後はこうして風まかせ

 

〽「リニアなの…」だからダメって言ったじゃないの乗った途端にあの世往き

 

〽「古稀(・・)過ぎネ…」ドット疲れが溜まって抜けぬ もうお迎えが来る時間

 

〽 お金も操も名誉もいらぬ 時の過ぎない日が欲しい

 

〽 気持ち良いわと身をよじらせて 止めちゃだめよと「足の裏」

 

〽 変なことしてオイタは駄目よ「アッ、ヤダ~!」止めちゃダメダメもっと下

 

〽 地方に行ったら病気になった「病名は?」医者の話じゃチホウ症

  「あら、元からだったじゃないの」

〽 都会に行ったら病気になった「病名は?」医者の話じゃチカン症

   「あら,満員電車ネ」

 

設計に 想いを賭けて 松葉かな

 

花堕ちる 音無く情け 友として

 

設計や 遠くの音に 耳澄ます

 

坐禅組み 正気の熱を 訪ねやる

 

称えあれ 縄文人の 円住居

 

 

2018年10月27日

2018年10月15日
近詠・句歌都々逸29

ふるさとの 磯の香りや 栄螺喰う

 

強羅なる 風温かき 苔の庭

 

箱根路や 幾歳月を たどる樹々

 

芦ノ湖の 船の向こうに 富士の峰

 

楽しみは 孫の雄叫び 宵の月

 

道半ば 今朝ひとつ咲く 西王母

 

彼の人と 月をツマミに ビール呑む

 

設計や 眼の先の闇 月明り

 

茶事一会 削る茶杓に 託す夢

 

床の花 獅子王に笑むか 客の貌

 

思い出は 白い椿に 池の路

 

懐かしや 紅い灯影に 揺れる胸

 

構想は 月冴え渡る 道の如

 

いつまでも 薄れぬ恋に 白椿

 

冬近し 妄想炬燵に 拡散す

 

妄想は 我が望みなり 月に問う

 

迷い道 今更ながらに 紅葉狩り

 

問答や 歓喜悶絶 郷の秋

 

待つ人も 来る人もなし 道祖神

 

今ココを 生きるか遅咲き 酔芙蓉

 

 

2018年10月15日